著・磯崎康彦(福島大学名誉教授)

江戸絵画の大御所、その軌跡を探究
谷文晁(1763-1840)は、現今とは異なり江戸画壇の大御所であり、落語にも登場する著名人であった。文晁は狩野派をはじめ、明清のみならず宋元の中国絵画を、さらに石川大浪から西洋画も習得した。寛政四年(一七九二)に田安家出身で老中松平定信附御絵師となった。定信は、文武奨励をとなえ、幕府の教学であった朱子学を正統化し、伝統文化保守の為、文晁に命じて『古画類聚』や『集古十種』を編纂させた。『石山寺縁起絵巻』を補完させたのも、伝統文化の保護であり教示である。他方、異国船がわが国の近海に出没するなか、海防政策が問題となり、文晁に命じて『公余探勝図』や木版画異国船図を描かせた。谷元旦、谷文一、谷文二らが文晁の教えをうけて画家となり、また写山楼からは多くのすぐれた門人が輩出された。渡辺崋山、高久靄崖、佐竹永海、田能村竹田ら多士済済である。


・A5判(148×210㎜)
・上製本 総366頁 カバー掛け
・文中図版掲載80点
・口絵カラー8頁、9点

■定価 8,148円 (本体7,407円+税)
ISBN978-4-947666-78-9


【主な内容】
第1章 前期(天明、寛政年間)の谷文晁
・文晁、加藤文麗や渡辺玄対のもとで学ぶ
・文晁と熊阪家の人々―文晁、高子二十境図を描く―
・松平定信の海防政策と文晁
・『集古十種』と文晁
第2章 谷文晁と蘭画
・文晁の「泰西画法」の師、石川大浪の生涯
・文晁の「泰西画」理解
第3章 中期(享和、文化年間)の谷文晁
・田能村竹田、文晁に師事す
・文晁、『石山寺縁起』巻六、巻七を補完
・『日本名山図会』と文晁
・文化六年、渡辺崋山、文晁に師事す
第4章 後期(文政、天保年間)の谷文晁
・浴恩園での松平定信と文晁
・文晁、鷹見泉石と交友す